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片思いの女性がセミナーに洗脳されて ~勧誘編~

目次

はじめに

これはわたし(せいじ)が、「ブレイクスルーテクノロジー」という自己啓発セミナーに勧誘されたお話です。

上記セミナーについて知りたい人しつこい勧誘に困っている人の参考になれば幸いです。

連絡は「goingsolo5121@gmail.com」まで。

ブレークスルーテクノロジーコースの効果

ブレークスルーテクノロジーコースは、様々な分野でブレークスルーを作り出す実践的手法を提供します。

――「ブレークスルーテクノロジー」公式HPより

ブレイクスルーテクノロジーの関連キーワード

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ブレイクスルーテクノロジー 洗脳

――グーグル検索より

20年ぶりの連絡

衝撃的な瞬間は、いつも前触れもなしに訪れる。

ある日、何気なくフェイスブックを開いたら

送信日:2022/10/18 1:24

「せいちゃん、久しぶりだね! 元気にしてる?」

※プライバシーに配慮し、彼女からのメッセージは適宜変更しています。

萌(仮名)からのメッセージを見た瞬間、頭に隕石が落ちてきたような気持ちになった。

小・中学校時代の友達は何人かいるけど、よりによって萌からメッセージが来るなんて!

わたしと萌について

わたしと萌は、千葉県の小さな田舎町で育った。

何度かクラス替えがあったにもかかわらず、彼女とは小・中学校と、9年間ずっと同じクラスだった。

萌のことは小学生のころから好きだった

大きくて丸い瞳。明るい茶色い髪。いたずら好きでおてんばな性格

お互いの良いところも悪いところも全部知っていて、そのうえでお互いを認め合える、そんな親友とも言える存在だった。

中学時代は同じ委員会活動をしたので、一緒に過ごす時間も長くなった。

その頃には好きだということすら気づけないほど、彼女のことが好きだった。

萌とは大学生になってから連絡が取れない状態だったけれど、また彼女と話せるなんて。

ウキウキのやり取り

はやる心を必死に抑えると、わたしは次のメッセージを送った。

めちゃくちゃ久しぶり!元気にしています。  20年ぶりくらい?だからすごくびっくりした!  最近はどう?

メッセージを送ってから20分。

これだけでは返事がしづらいかなと、下記のメッセージを追加で送信。

今週末、兵庫から大阪まで100km歩く地獄のイベントがあって、それに参加するくらいは元気です

関西エクストリームウォーク100

うーん、恥ずかしいぐらい浮かれているのがわかる。

どうして好きな人からメッセージが来ると、いけないとわかっていても追伸メッセージを送ってしまうんだろう。

最初の違和感

萌に返事を送ったが、4日たってもメッセージは来なかった。待っている間、すごく不安だった。

「返事の内容がまずかったのかな」

「彼女はあの事をまだ怒っていて、気が変わったのかも

ただの冷やかしだったのかな」

そんなことを考えていたら、メッセージに送った「100km歩くイベント」の開催日になってしまった。

もやもやした気持ちだったけど仕方がない。胸にしこりを抱えたまま歩いた。

彼女から返信が来たのは、63km地点の休憩ポイントで休んでいる時のことだった。

遅くなりました!元気そうで何より

話したいことあって、いつか電話できるかな?

この時点で「何かがおかしい」と気づくべきだった。

自分が100kmウォークに参加することは話したし、今ちょうどレース中なのは彼女にもわかるはずだった。

それなのに、彼女は「変なレースだね!」とか「頑張って!」とかの一言もなく、ただ「電話したい」と言ってきた。

この「かみ合わない感じ」を、この後のやり取りで何十回も味わうことになるのだった。

とにかくその時はレースの途中だったので、ゴールすることだけを考えた。

結果、なんとか完走できたが、全身の筋肉痛とストレスで2日ほど寝込んでしまった。

すると萌から追伸メッセージが来ていた。

いきなりびっくりするよね、ごめんね。企業研修で過去の探求してて、せいちゃんを思い出したんだ

あとで判明することになるのだが、この「企業研修」というのは嘘だった。

そんなことにも気づかず、わたしは急いで

「また話せるならぜひ話したいです!

「いつか」なんて言わないで。今週の金曜日か土曜日の午後8時とかどうかな」

と送信。

電話する日は次週の土曜日に決まった。

通話は突然に

彼女と話す機会は唐突に訪れた。ある日のお昼に突然、

「今日、電話できることになった! かけてもいい?」

とメッセージが来たのだ。

「でも、今日は旅行に行く日って言ってなかった?」

「移動日だから大丈夫!」

ということで、その日の夜に電話が来ることになった

正直、電話の時間になるのが怖くて仕方がなかった。胃がひっくり返りそうなほど緊張した。

一番気になっていたのは

「萌は結婚しているのだろうか?」

ということ。

わたしたちは30を過ぎている。彼女は昔からモテたから、未だに結婚していないということはないだろう。

でも、彼女が結婚しているという事実を知ったら、相当なダメージを受ける気がした

ショックに備えるため、わたしはノートにこんなメモを残した。

「もし彼女が結婚していたら、『恋人は1人までしか持てないけど、友達は何人いてもいいからな』って言って強がろう」

意味がわからない……。

そして約束の時間になった。電話はこなかった。

ファーストパンチ

「少し遅れます」🙏

約束の時間から20分後、ついに電話が鳴った。体がびくんと跳ねた。

「久しぶり!」

「久しぶり。お前、そんな声だったっけ?」

「これがわたしの声だよー。なんかバタバタしちゃってごめんね」

「いや、全然」

「今、子供と一緒に沖縄旅行に来ているんだけどさ。

今日は移動日ってことで、のんびりすることにしたんだ」

ドガーン。

萌、やっぱり結婚してたんだ。

思わずスマホを取り落としそうになったが、なんとか踏ん張った。

「わたしね、今結婚していて、子供が二人いるんだ

ドッギャーン。

ヤバい吐きそうだ。でもそりゃそうだよ、お互いこの歳だもん。

動揺を必死に隠すと、

「でもよかったよ。萌が俺のこと思い出してくれて。

急に連絡くれたけど、何か病気したとか、そういう理由じゃないんだよね?」

「うん、元気だよ!」

よかった。

この年の春、中学時代の同級生がガンで亡くなった

体調が悪く、病院を受診した時には末期ガンであることが判明。それから半年も持たずに亡くなってしまった

だから、萌の身にも何かあったのではないかと心配だったのだ。

歴史的な和解

彼女は本題に入った。

「実はわたしね、せいちゃんに謝りたいことがあったの

「あー、なんとなくわかるからいいよ」

「予備校で再会した時、わたし、せいちゃんに冷たく当たっちゃったよね。もう、ほとんど無視とかしたよね

事実だった。わたしと萌は大学の予備校で、ばったり再会した。

それだけでも信じられない思いだったが、もっと信じられないことが起きた。

当時の萌はお高くとまっていて、わたしのことを全く相手にしなかったのだ。

そのことは数年のトラウマになったが、なんとか克服した。

それに、自分にも非はあった。

「そのことはいいって。悪いのは俺だから

「そうなの?」

「ほら、高校時代、俺はお前に『俺はこっちで友達ができたから、もう連絡しなくていい』みたいなこと言って、ケンカしたじゃん。

そんなことしたから、萌は俺に冷たくしたんでしょ?

高校時代の自分は友人関係がうまくいかず、周りの人間が自分を笑っているという被害妄想におちいっていた。

そして、自分から萌を突き放すようなことを言ってしまったのだ。

「そんなことあったっけ?」

「あったよ。俺、ずっとそのことを謝りたかったんだ」

「そうなの? わたしは全然、せいちゃんとケンカしたって記憶はないんだけどなー」

「マジかよ!? 俺、ずっと悩んでいたのに……」

そう言って、2人で笑った。

最高の気分だった。もう「明日死んでも後悔しない」とすら思った。

ここで通話が終わっていれば、「ちょっぴりビターな初恋の終わり」で済んだのに。

しかし、ここで終わらないのが人生だった。

本題

「実はね、せいちゃんを思い出したのは、あるセミナーがきっかけだったんだ」

「へー」

『ブレイクスルーテクノロジー』って知ってる? 過去を振り返って、人間が持つ可能性を追求するセミナーなんだけど」

萌はセミナーを受けて、ある劇的な変化が起きたという。

彼女は子供の頃、父と仲が悪かった。

「当時のお父さんはバリバリの仕事人間でね、いつもムスッとしてた。仕事と昇進のことだけを考えてるような人だった。

食事に好きな食べ物が出てこないだけで、機嫌を悪くすることもあったんだよ」

そんな彼女は、父に愛されているという自覚がなかったという。そのため

「わたしに子供が生まれたときも、お父さんとは仲が悪くって。『孫に会いたいなら会わせてやるよ』ぐらいの気持ちだったんた」

しかし、セミナーのセッションで、彼女は自分の過去と向き合うことを勧められた。そして、父に電話をかけることになった。

「お父さんそしたらね、『あの時は萌にすまないことしたなー』とか言っちゃって。

でも、お父さんはお父さんなりに、わたしのことを考えていてくれたのがわかってさ、仲直りしたんだ」

「よかったじゃん」

まだだ、まだ今なら引き返せる。

勧誘の始まり

「せいちゃんのことを思い出したのも、ブレイクスルーテクノロジーのセミナーがきっかけなの。

よく考えてみたらこのセミナー、せいちゃんにもピッタリじゃんって思って!

せいちゃん、昔から色々なことに一生懸命だったじゃん?

だからぜひセミナーを受けてほしいの。3日で16万円かかるけど、本当にいいセミナーだから!」

「16万!」

そういう自己啓発セミナーがあるのは聞いたことがあるが、実際に金額を耳にすると、やはりインパクトがある。

「このセミナー、本当に効果があるんだよ!

わたしの旦那、自営業なんだけどね、セミナーを受けてから売り上げが7倍に上がったんだ」

「ふーん」(売上10万が70万になったとか、そういうオチじゃないよな)

「わたしもね、セミナーを受けるまでは子供に対してどこかよそよそしくて、型通りの愛情しか示すことができなかったの

でも、セミナーを受けてからは子供にストレートに愛情を表現できるようになったんだ!

売り上げが上がるとか、愛情を表現できるとか、セミナーとの因果関係がわからない。

これがビジネスの取引だったら、全くお話にならないレベルの勧誘だった。

彼女は洗脳されているか?

萌はとても張り切った口調で、

「ねぇ、セミナーを受けるかどうか、今日この場で決めようよ! 人ってさ、後伸ばしにしちゃうと、結局やらないから。ね?」

「いやでも、3日で16万だろ? そんなお金ないよ」

「お金がないなら事前に入会金2万円を払って、セミナー当日までにお金を用意するってこともできるよ」

「そういう問題じゃなくて、俺セミナーとか宗教にお金を使いたくなくて……」

彼女は何かを察したようだった。

「もしかして、せいちゃんはわたしがおかしなセミナーに洗脳されてるって思ってるでしょ?

大丈夫だよ、洗脳されてないから

萌ちゃんそれ「洗脳されている人が必ず口にする言葉」だからー!

普通に生きてたら「洗脳」なんて言葉自体、口にしないからー!

助けてグーグル先生

いよいよ事態は深刻化していくのがわかった。

通話しながら、セミナーの主催会社である「ランドマークワールドワイド」で検索してみると

関連キーワードに「やばい」が2個入るというスキのなさ。

「ブレイクスルーテクノロジー」で検索した結果がこちら。

この時点でもうイヤになった

反抗心の芽生え

話の流れはどんどんおかしい方向へ進んだ。

「それでせいちゃんは今、何をしてるの?」

セミナーの話題を断ち切れるかなと思い、正直に自分の現状を話した。

大学を出てからしばらくフラフラしていたが、熱意あるベンチャー企業で5年働いたこと。

諸事情でその会社を退職してからは、これという仕事が見つからなくて困っていること。

「日本の面白い遊びを広める」をテーマにブログを書いているが、5年かけても芽が出ないこと。

それを聞いた彼女は

「やっぱり、せいちゃんにはこのセミナーはピッタリだって! セミナーに参加した人は、みんな自分にピッタリの仕事を見つけてるんだよ。

結婚はしてるの? してない? このセミナーに参加して、大切なパートナーができたって人もたくさんいるよ!

この発言にはさすがに反感を覚えた。セミナーに入るだけで仕事も恋愛も成功するなら、誰も苦労しない

「ねえ。萌は『俺の努力が足りてない』って言いたいの?

俺の夢は、たかが3日のセミナーに参加するだけですべて手に入るっていうの?」

「ごめん。そんなつもりじゃないよ」

「そもそも、電話をかけた理由が『セミナーの勧誘』ってのがショックだわ。友達を売るようなもんじゃん

セミナーに勧誘しても、お金なんてもらえないよ! わたしは善意100%でセミナーに誘ってるの

その方がタチ悪いよー!

あとで調べてみたが、彼女の言うことは事実だった。「ランドマークワールドワイド」のやり口は、

「ボランティアを洗脳して、タダで勧誘させる」のがミソなのだ。

勧誘でインセンティブを取ろうとすると、マルチ商法に引っかかる恐れがある。

しかし、ボランティアが勝手に勧誘する分には何の問題もない。実にあっぱれな話だ。

かすかな抵抗、そして失望

いつの間にか、自分はベッドに横たわった状態で通話をしていた。

そうしないとまともに起きていられないぐらい、ショックだった。

「俺は、お金目当てでセミナーに勧誘された方がよっぽどマシだったよ。善意で勧誘されるのが一番辛い

「なんで善意で勧誘されると辛いの?」

その時はうまく答えられなかったが、今ならわかる。

彼女は「タダ」で俺をセミナーに売り渡したのだ。それなら16万で売られた方がマシだった。

「彼女の眼を覚ますため、セミナーに潜入してみるか?

そんな考えが一瞬浮かんだが、即座に却下した。

「知人をカルトから助け出そうとして、その人も洗脳されてしまう」

というのはよくある話で、オウム真理教でも同じような事例があったという。

(俺はどうしたらいいんだろう)

セミナーには絶対に行かない。でも、できるなら彼女を連れ戻したい

旦那はどうでもいいが、彼女だけでもなんとかできないだろうか?

「萌はこのセミナー、ほかにも誘っている人はいる?」

「うん。大切な友達でしょ、会社の同僚でしょ、あとは尊敬できる先輩でしょ?」

あら。

「この前はお母さんがセミナーに参加したよ。お母さん、前よりもすごくポジティブになったよ!」

あらあら。

「あとはでしょ、あと、義理のお母さんも参加したよ」

あらあらあら。

(いくら良いセミナーだって、そこまでハマったら逆に異常だろ!

この日、最も絶望した瞬間だった。

これは火遊びでは済まない。手を出せば簡単に取り込まれてしまうだろう。

「友人をカルトから取り戻す」なんて、幻想でしかないのだろうか。

そして喜劇へ

萌の勧誘はクライマックスに突入した。

「わたしね、セミナーを受けるまで、今までの人生が空っぽだったことに気づいたんだ。

ただ、周りからちやほやされることしか考えてこなかった

今、わたし『〇〇〇(大手航空会社)』でCAしてるんだけどさ、それだって『ちやほやされるため』の一手段でしかなかったんだ」

ああ。

「だけどセミナーに参加して、わたし決心したの。

これからの人生『このセミナーを広めるために使おう』って。わたし、やると決めたら一直線だから!」

もうやめて。俺の知っている萌はそんなこと言わない。

そこからはもう喜劇だった。

「何が何でもセミナーに勧誘したい彼女」

「何が何でも話を終わらせたい自分」の、絶望的にかみ合わない会話が続いた。

「だからとにかく、1回セミナーに参加にしてみようよ」

「ごめん」

じゃあ説明会だけでも参加しよう? よかったらわたしも一緒に説明会に行くよ」

「無理」

「次空いている日はいつ?」

「空いてない」

「あっ、11月の土日はどうかな?」

萌と話せば話すほど溝は深まるばかりで、とても悲しかった。

何を言ってもこちらの言葉が、全く伝わらないのだ。

自分はセミナーに参加したくないこと、そのセミナーが胡散臭いと感じること。

どんなに言葉を尽くしても、彼女は「わかってるよ」の一言で受け流す。そしてしつこく勧誘を繰り返す

まるで、自分が「聞き分けのない子供」扱いされている気分だった。

彼女の口ぶりからは

「こんなに良いセミナーなのに、なんで参加しないのかなー」という呆れすら感じられた。

終話

不毛なやり取りは1時間以上続いた。もう限界だった。

「いったん電話を切ろう? 家族旅行に来てるのに、子供をほったらかしちゃダメでしょ

とっさに口に出した言葉だったが、実際それは異常だった。

時刻は午後11時。

家族旅行の初日に、彼女は子供を放ってセミナーの勧誘に精を出しているのだ。

また、彼女は「セミナーを通じて心から子供たちを愛せるようになった」と言っていた。

そのわりに、彼女は愛しい我が子を紹介してはくれなかった。

だから自分は、彼女の子供たちの名前も、性別も、年齢もいっさい知らない。子育てエピソードの1つも聞いていない

「でも、説明会だけでも……」

「いや、もう十分。とにかく電話を切ろう。俺トイレ行きたいし」

「わかった。今日はせいちゃんと話せてよかったよ。それじゃあね、バイバイ」

電話を切ったあと、スマホをベッドに叩きつけた。

床に頭をガンガン打ち付けた。涙が出てきた

――昔好きだった女性が、結婚して子供ができていた

この事実はなんとか受け止めることができた。もうどうでもいいんだ、そんなこと。

――昔好きだった女性が、胡散臭いセミナーにハマって勧誘してきた

これはいくらなんでもあんまりだ。

彼女いわく、最初に「ブレークスルーテクノロジーコース」を受講したのは旦那だという。

そいつをぶん殴ってやりたかった。わたしにはその男が

「自分の不甲斐なさから逃げて、インチキセミナーにハマった臆病者」にしか思えなかった。

涙が止まらなかった。

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